
取り扱い印材について
述章堂では、手彫りが可能な天然素材の印材のみを取り扱っております。
お客様に永くお使いいただけるよう、印材は品質にこだわり、職人の厳しい目で
厳選した印材のみを使用しております。

本柘
ツゲの木は「木偏に石」という字が示すように、とても硬く細かい彫刻作業に適しています。
国内の柘の産地としては鹿児島県が特に有名で「薩摩ツゲ」や「本ツゲ」として知られています。
天然木質系の印材には、アカネ(シャムツゲ)などもありますが、薩摩本柘は成長が遅く木質が非常に緻密です。そのため木質印材の中でも特に高品質な素材として評価されています。
黄色味を帯びた淡い色合いとうっすらと浮かぶ木目が美しく、木のぬくもりを感じさせます。
乾燥や衝撃には弱い面があるため、取り扱いや保管には注意が必要です。



黒水牛
黒水牛は主に東南アジアに生息する水牛の角を素材としています。角は爪に似た硬さを持ち、象牙に比べると硬度はやや劣るものの弾力性に優れており、柘(つげ)材よりも衝撃に強いのが特徴です。適度な粘りがあるため細かい彫刻にも非常に適しています。
特に「芯持ち」と呼ばれる角の中心部分のしっかりと芯の通った部位が高品質とされ、その中でも角の先端に近い部分で芯が小さいものが最良の素材とされています。当店では芯持ちを使用しています。
黒水牛は深い黒色の艶を持ち、重厚感あふれる印材として人気があります。
(牛の印材については食用の副産物として角を利用させていただいております。印のために牛が殺されているという事はありません。)


白牛(オランダ水牛)
白牛は、オーストラリアやアフリカで飼育されている陸牛の角を使用した印材です。かつて「オランダ水牛」と呼ばれていましたが、オランダ産でも水牛でもないためやや誤解を招きやすい名前でした。
素材としては、黒水牛よりも密度が高く繊維が細かいため、より柔らかく粘りのある性質を持っています。このため細密な彫刻をする際にも彫りやすく、印材として非常に適しています。
黒水牛同様、白牛も芯持ちの印材を使用しています。
色味は白やベージュ、グレーを基調に、茶色の美しい模様が入り上品な印象を与える印材です。
また、質の劣化が非常に緩やかで長年使い続けても改刻(彫り直し)が可能です。
そのため、ご自身が使わなくなった後も削り直して次の世代へ引き継ぐ改刻ができます。
まさに「受け継がれる印材」といえます。

模様は印材ごとに異なり、それぞれ唯一無二の風合いを持っているのも、白牛印材の大きな魅力です。自然のままの色合いや模様が一つ一つ異なるため、世界に一つだけの印として特別感があります。


白牛(オランダ水牛)純白
白牛純白は、茶色い模様(ふ)の入っていない部分だけを選び出して作られる、非常に希少で高級な印材です。
さらに、角の先端部分を使用しているため通常の白牛よりも更に密度が高く強度や粘りに優れています。このため彫刻性も非常に高く、繊細で美しい仕上がりが可能です。
実際手で彫ると、刃がすっと入り滑らかで柔らかいのに繊維が詰まっていて強いという品質の良さを実感します。
最上級の素材と上品な風合いを兼ね備えた美しい印材です。
長く大切に使える印材として特別な印章を作りたい方に選ばれています。


象牙
象牙は耐久性、耐摩耗性、陰影の美しさに優れ印材の王様と称されています。
牛角がタンパク質であることに対し象牙は歯なので、乾燥や湿度にも非常に強く、長い年月を経ても劣化が少ないことが特徴です。
硬度が高く、組織が細密なので細密な彫刻が可能です。
また、朱肉の油を吸い込むことで印全体に艶が生まれ、印面が油で潤い、使い込むほどに美しい印影となります。
現在は輸入がされていないため価格が高騰していますが、100年以上にわたって使える素材です。
当店でも、初代が作った130年前の象牙印を今も使用しています。長い目で見れば最もエコな印材と言えるでしょう。
象牙製品を取扱う業者は、日本政府の許可を受けた「特定国際種事業者」として登録されています。
これにより正規の業者であることが保証されています。