
刻字作品
刻字(こくじ)とは、木などの素材に文字や図案を彫り込んで装飾や表現を行う技法で書道と彫刻の要素を併せ持つ伝統芸術です。単に文字を彫るだけでなく金箔や着彩を施すことでより立体的かつ芸術的な造形として発展してきました。
当店の四代目の師匠である大久保翠洞(おおくぼ すいどう/1906–1997)は、日本を代表する篆刻家・刻字作家であり、「刻字」を“壁面の篆刻”として捉え、現在の刻字表現につながる独自の芸術的領域を切り開いた人物です。代表作には、日光輪王寺三仏堂の「金堂」や奈良長谷寺本堂の「大悲閣」の扁額があり、その作品はニューヨークの国連本部にも飾られるなど世界中の人々を魅了しています。
また当店五代目の師匠である井上都洞(いのうえ とどう)氏も大久保翠洞の直弟子であり、毎日書道展・刻字部門の審査員を務めるなど、現代の刻字界の中核を担う作家として活躍されています。
この流れを受けて、当店五代目もまた印章制作の修行の一環として刻字を学び、作品制作にも取り組んでおります。
刻字作品は彫り上げるまでに数ヶ月必要なため納期が長くかかりますが、受注も承っております。
ご興味のある方はどうぞお問い合わせください。

「響」
響の金文体です。ご馳走を真ん中にして二人が向き合う形です。向かい合い楽しく食事をしている間に音楽や会話の音が伝わっている様子です。

「遊神」
心を解き放って楽しむこと。

「随處樂」
たとえどのような場所、どのような境遇にあっても楽しむ心を失わない、超越した心境。

「杜口風塵外安心筆墨間」
俗事や俗世間のことをかれこれ云わず、心を筆墨の間に安んずる。

「虚無」
あらゆる価値や意味を空虚に感じること、わだかまりがないこと。

「臨淵羨魚不如退而結網」
いたずらに幸を望むよりは、それを得るための方法等を講じた方がよい。

「時」
時の金文体。太陽の象形と、立ち止まる足の象形と、出発線を示す横線。
出発線から今にも一歩進み出していく様