
書体について
漢字は紀元前1300年頃の殷代に、甲骨文字として誕生しました。以後、金文、篆書、隷書、楷書、行書、草書と、長い歴史の中で変化と発展を遂げてきました。
印に使われる書体も、この漢字の伝統的な書体に基づいています。それぞれの書体が持つ特徴や美しさを活かしながら、印の使用目的や場面にふさわしい書体が選ばれます。
当店の職人は印を彫る技術を習得する前に、まず書道の修行から始めます。
印は使う方にとって「分身」とも言える大切な存在だからこそ、全ての書体について書道の技術と漢字の成り立ちを深く学び、理解を深めた上で心を込めてお作りしています。
書体の種類

楷書体(かいしょたい)は、文字の形が整っており、一画一画が丁寧に書かれているため読みやすく安定感があります。
名前や会社名をはっきりと伝えたいときによく使われます。真面目で信頼感のある印 象を与える書体です。

行書体(ぎょうしょたい)は筆の流れが自然で、やわらかく動きのある印象が特徴です。
ほどよい品格と親しみやすさがあり、読みやすさと美しさを兼ね備えた書体です。

古印体(こいんたい)は、やや丸みを帯びた独特の風合いを持つ書体です。
文字の線が太く、柔らかく、素朴で温かみのある印象を与えます。個人の認印や趣味的な印鑑によく使われています。

篆書体(てんしょたい)は、最も古い漢字の書体のひとつで装飾的で格式の高い印象を持つのが特徴です。
公式印に用いられる書体でもあり実印や法人印によく使われ、「印らしい」風格と重みのある書体です

隷書体(れいしょたい)は、横画がやや平たく広がり、線の始まりや終わりに独特の「波磔(はたく)」と呼ばれる払いの形があるのが特徴です。
落ち着きや風格、伝統的な美しさを感じさせる仕上がりになります。歴史的な重みや個性を大切にしたい方に好まれる書体です。

金文体(きんぶんたい)は、「金属に刻まれた文字」という意味で、甲骨文字の次に古い書体です。
漢字の元の字に近い為、自由でのびのびとしており、独特の美しさと芸術性があります。個性的で趣のある仕上がりになります。
*印の書体には他に「吉相体」があります。運が良くなる書体と知られておりますが、これは印鑑のために考案された書体であり、漢字の歴史の正式な系譜には含まれない造字となっております。
当店では、漢字の伝統的な書体や筆致の美しさを大切にしているため、吉相体の作成は承っておりません。何卒ご理解いただけますようお願い申し上げます。
4文字の書体サンプル

山田太郎(篆書体)

山田太郎(金文体)

泉谷征斗(篆書体)
